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愛しの花たち in Canada

悲しい思い出と息子の遺産相続 




私の遺産相続ではなくて、夫の実家の遺産相続のこと。

夫が死んだあと、私はすべてを捨てて、日本を後にした。

20年も前の話である。夫は未分化がんといわれる足の速いがんで、

わずか1か月半で、彼岸に逝ってしまったのであった。

夫は過疎地の一人息子、祖母に両親と山や畑、田んぼが残されていた。

私があのまま、日本に在住していたとすれば、私の人生の残り時間を

夫の家族と過疎地の田畑に捧げなければならないはずだった。

20年前、私は決断した。残りの私の人生は誰のものでもない私自身の

物であると。日本と係累の軋轢を捨て、そしてカナダに

移住したのであった。

この正月、最後に残された夫の母があの世に旅立った。

夫には一人妹があって、彼女がこの20年、すべてを仕切って

きたのであった。大変だったとは思う。私が日本にいたとしても、私には

できることはおそらく何もなかったに違いない。

結婚以来、無意識に私は夫の家族や、住んでいる限界集落を嫌ってきた。

その風習、知的でないその生活形態。私にはとても同化することなど

無理なことだった。

私の生まれは同じ和歌山でも違う地域であった。仲は良くなかったが

家族はみんな大学を出ていて、知的ではあったと思う。

夫の義母も義祖母も、昔話に出てくるような人たちであった。

体の弱い義父を守って、信じられないほど働く人たちであった。

結婚して夫の家に帰ると、まるで昔話の中に帰っていくような

感じがしたものだ。

夫はそういう家族と自然の中で育ったのであった。

夫は人の好い男であった。弁護士をしていたが、まるでお金とは

縁のない働きをしていた。

社会派の弁護士で、森永ミルク中毒事件やスモン、予防接種事故などの

弁護団に入り稼ぎの少ない仕事に生きがいを見出しているような

ところもあった。

私はそういう、男を愛したのであった。誇りにしていたのであった。

今も私は彼を愛し、彼を誇りに思っている。それには変わらないのだし、

それでいいのだが、ここで信じられない己の性を見つめる事態が発生した。

ちなみに私は夫の実家とはもう、何も関係ないのである。私と彼らは

他人なのである。

なのに、私は腹を立てている。相続は私ではなく、息子たちの話なの

である。私たちはもう、お金も資産も何もいらない、すでに二人の息子も

独立して生計を建てていて、必要なものは何もないのであった。

いや、お金はあったに越したことはないが、有り余るほどあったとしても

それは幸せにはつながらない。

義母がなくなったとき、息子は甥から、義父が亡くなったとき一億の

お金が残されていたと話したそうである。息子も驚いたであろうし、

私も驚いた。そんなお金があるはずもないと私は思った。しかし、

よく考えてみると、彼らは夫に生命保険を20年ほどかけていた。

それは知っている。親類の勧誘員にかけさせられたのであった。

夫は60になる前になくなったので、おそらく五千万くらいは

そこからのものであろう。そして、残りは、つましい中から、

遣わずに貯めてきたものに違いない。そんなはずはないと思い

ながらも納得していた。

義父の相続は行われず、義母が亡くなった今、それは行われる

ことなった。すべては義妹が取り仕切っていたので、義妹が

息子たちに提示してきた相続に驚いてしまった。

現金はなし。ど田舎のことで、農協などは預金を相続させずに

ごまかせることもあると聞いた。土地家屋は義妹がすべてとり、

残りの田畑は息子二人との義妹の共有というのである。決して

処分できないようにしているのであろう。ははあ、これは

元弁護士の妻としては、後ろで誰かが知恵を貸していると

思わずにはいられない。

冷静になれば、夫の家族の財産など、ほしいと思ったことは

なかったし、だいたい、貧しい彼らにお金があるともおもえなかった。

私は常に、上から目線で夫の家族を見ていた。夫の家族を軽蔑

さえしていた。

夫もそのことは知っていて、亡くなる際に義妹に、山東のことは

すべてお前に任せると言ったのだった。私を解放してくれたのだ

とおもう。

だからこそ、私は今、バンクーバーで心豊かな生活を送れている

のであったから。

その時義妹は、夫にか、私にか、こういった。私は大学には行かせて

もらえなかったと。50も半ばを超えた女が、そういったのである。

そのときは私はまだ、その思いがどのように深いものか、知る由もなかった。

病床で夫もその話は聞こえたはずだった。

夫と義妹は一つ違い、夫が大学に行くために、義妹は父親から進学を

あきらめさせられたのであった。また、彼女には結婚を約束した男がいた。

電気軌道の車掌をしていて、指輪までもらっていたそうだが、義父は

その男の家柄を調べて反対した。そして、義妹は、父親の言に従い、

長い塀のあるぼろぼろの家に住んでいた、出来の悪い半日蔭のような男と

結婚させられたのだった。

何度ももめて夫婦仲は良くなかったが、離婚することもなく、いまも

その家で采配を振るっている。夫の家族はそんな悲しい家族であった。

ほかにもこんなストリーを聞いた。

義祖母は18のとき、小さな女の子を残して死んだ嫁の後添えに

嫁がされたのだそうだ。

その男、義祖父だが、は1軒隣の後家さんに子供を産ませたりする

女たらしであったようだ。

わしは18で何も知らずに田んぼで蓮華摘んでたんやと、義祖母は私に何度も

話した。義母は美人ではなかったが性格の良い人で、賢い人だった。ただただ、

義祖母や義父の暴言に耐えていた。時には娘の義妹にさえ、お母ちゃんは

あほやなあと言われていた。

今ならあほやなあという関西弁は愛してるよという代言だと私でもわかる。

しかし、わが子のおしめを奥の間からわが母親向かって投げつける義妹を

見たとき私は心底、この家族はいやだと思わずにはいられなかった。

母親に向かって、あほやなあなどと、失礼なことを私は言ったことがなかった。

両親を反論したりしたが、ある意味リスペクトはしていたが、失礼な

物言いはしたことがない。

私は義妹ほど自分の母親を愛していなかったのかもしれない。冷たく見ていた

のかもしれない。義妹はおしめを母親向かって投げつけながら、あほや

なあお母ちゃんはと言えるほど、母親を愛していたのに違いない。

そんなあんなで、お金は義妹が巻き上げ、田畑も、息子たちが処分でき

ないように勝手に遺産分割して、提示してきている。

心沈めて考えてみれば、彼女は兄嫁であった私に報復したのだと

思われる。それほど彼女の思いは深かったのだ。義妹と私はわずか1歳違い。

彼女も私もあと何年生きられるだろう。豊田商事のベルギーダイヤモンドや

観音竹商法で何度もだまされる家族が、またまた、誰かにそそのかされてか

相続対策のためにアパートを建てているそうだ。使いきれないほどの遺産が

あるということか。質素な生活でお金を残す幸せもありなのかもしれない。

義妹ははじめて、今の幸せをかみしめているだろう。

そして、私も魑魅魍魎の渦巻く日本をはるか離れて、心底、

幸せをかみしめているのだった。すべては終わったのだ。

この物語を二人の息子に読ませようと思う。






by cyanagitani | 2017-05-26 03:49 | Comments(4)
Commented by ランタナ at 2017-05-26 08:42 x
ご本で多少存じあげているし、「田舎のあれこれミミドシマ」は、うなづけるところ多々です。
ビンボーは、人をゆがめ、哀しいです。選択した今を喜べる=最高 「肯定の日々」をこれからも。
Commented by cyanagitani at 2017-05-26 11:17
ランタナ様 全くです。人生の各岐路に立って常に自分で選び取りながらきて今がある。良きにつけ悪しきにつけ、満足です。ブログに書いてみて、整理が付きました。息子たちにも読んでもらいたいから、ここに書きました。今は冷静です。
Commented by hananojiyusenritu at 2017-05-26 13:22
う~ん・・・。まぁ使い切れないお金は絵に描いた餅ってことで。取りあえず今日は去年のトマトの落ちた実生の苗を植え替えてトマト畑できました。これも幸せのひとつ?
Commented by cyanagitani at 2017-05-26 13:49
あはははは、使い切れないほど持ってみたいけど、今はもう何もほしくないよね。少しのお金でも、もう使い切れない。笑 我が家もあちこちからトマトやボリジ出てきてます。それと三つ葉がすごい。毎日三つ葉三昧。チャんナムルに勝てるかも。
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異郷の地ではぐくんだ花たちとChieko's Life

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